実験4号

生きのばしていく

春の雨

どうも、パンパスグミ(https://twitter.com/panpasgumi)というバンドでベースを弾いている実験と申します。

 

突然ですが、この世の中には僕にはよく分からない事でいっぱいです。

金木犀の匂いがどれだかわかりません。

スピッツの歌詞の凄さがわかりません。

「家に自分の帰りを待っている人がいると安心する」という気持ちがわからな過ぎて、そういう奴は全員気狂いだと思います。

分からない事だらけのはずの世の中で分かったような面して生きている人は全員白痴ですか?早く良くなるといいですね。

 

そんなことを日々思っている私ですが、最近大切な存在が出来ました。

「ピーヤング 春雨」です。 

まるか商事 ピーヤング春雨 66g×18個

まるか商事 ピーヤング春雨 66g×18個

 

名前から分かる通り、ぺヤングカップ焼きそばのまるか食品㈱の商品です。簡単に言うとカップ焼きそばの麺を春雨に置き換えたものです。

 

コンビニでこの商品を初めて見つけた時、自分の中の春雨に対する様々な思いが滾々と湧き上がりました。

まだ体の到る所に毛の生えていなかった少年時代、家族で水炊き鍋をやる時に必ず入っていた春雨がおいしくてがっついていたこと。

夕食に麻婆春雨が出てくる頻度が下がり、「春雨を買うお金がないのかな」と家計が心配になったこと。

中学生くらいの頃、初めてコンビニで夜食を買いに行った時、麻婆春雨が売っていて即購入したこと。

大学の生協に陳列されていたカップ春雨の物足りなさに、袖を涙で濡らしたこと。

フラッシュバックする記憶の流れの中で、気が付けばビニール袋を該当商品でパンパンに膨らませて自宅の玄関に立ち尽くす自分。はは。

 

 

その後の事は良く覚えていません。ただ、気が付けば口の中の皮が火傷でズルズルになっていて、 机の上には空のカップが散らかっていて、それを見て奇妙な充足感とともに眠りに落ちた私は、翌日普通に仕事に遅刻しました。「家でお腹が痛くなっちゃって」との私の曖昧な言い訳を、曖昧な表情で聞き流す上司。曖昧な製品を作る会社で、曖昧な書類を右から左へ流すだけの業務。人間性を緩慢にしかし確実に奪っていく労働の中で、ただ昨日のカップ春雨の感触だけが本物の輝きを放っていた。