実験4号

生きのばしていく

ライブレポ:12/23SPOILMAN、12/24computer fight&TACO

 

 

 まずは12/23SPOILMANから。前日の深夜残業が祟り、朝うまく起きることができなかったがなんとか15分以内の遅刻に収める。14時開始でホントに助かった。滝野川は前住んでいたので馴染みもあり、しかしそんな区民センターがあるとは知らんかったゾイって感じでぜひ行くっきゃないという感じだった。道中Xのタイムラインを眺めると「新譜が発売されている!」という謎のニュース。

 

 会場はやたら高層ということを除けば至って普通の区民スペース。会場が8階だからなのか、1Fロビーに到着した段階では特に音が漏れ聞こえてきたりはしない。8階に到着すると「演奏中出入り禁止 曲間で入場してください」の張り紙。待っている間にトイレを済ませるも、5.Drunken Man~6.Flock Of Seagulls の曲間がほぼなく入場失敗。Flock Of Seagulls好きだったので残念。

 

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 入場すると、なんかのフェス?というくらいに沢山の人がおり、SPOILMANの人気を実感。奥の方に進むと椅子がありとても嬉しい気持ちになった。とりあえずカバンを端に置き演奏を聞き始める。

 

 SPOILMANのライブで思うのはスリーピースとは思えない音の迫力があることだ。たぶん音のバランスがいいんだろう。よくわからんけど。あとチャックさんの謎の動きも見どころだ。今回はカシマさんがチャックさんから水を強奪する一幕があり、会場は爆笑(辞書的な意味で)。自分は全てのライブにおいてMCとかいらね~と常日頃思っているものの、こういうランダムなエンタメ性はライブの魅力を底上げすると思う。SPOILMANのライブは既に何回も見ているが、いつも楽しめるのはこういうところにも要因があるのかもしれない。

 

 

 

 結果的には2023年に見た中でも随一のライブ体験だったと思う。もちろん演奏が良かったのは前提として、今回は自分と会場との相性が良かった。椅子が置いてあっていつでも休めるし、カシマさんは「好きに聴いてくれ」という感じの態度を出しているし、アルコールに負けて眠くなることもない。誰もがFugaziを連想するロケーションも現場で鑑賞することの意味を強めてくれるように感じられる。あとPAめちゃくちゃよかった。先週見たORGE YOU ASSHOLE(@LIQUIDROOM)のライブも良かったけど、「ライブ体験」という総合的な視点ではSPOILMANのライブの方が楽しめた。別にどっちの方が優れているとかではなく、個人的な相性の話だけど。

 

 今回ここまでのクオリティのイベントができたのは、おそらく3LA水谷さんの尽力も大きいのだろう。会場手配、ステージセッティング、機材レンタル、PAスタッフ配置、などなどなど、ざっと想像するだけで恐ろしい量の事務が発生していることが窺える。拍手。(後日チャックさんからおおよその予算感を聞いてなるほどとなった)

 

 終演後、(本当に発売されていた)新譜を購入して、諦念玲奈と一緒に翌日のライブのビラを配った。自分もうメンバーじゃないけど…。多くの見知った人々の顔を見ることができ、SPOILMANのライブはもう既に一つのコミュニティを形成できるほどのレベルになっているのだなあと実感した。

 

 新譜を購入する時、「アルバム制作するの速すぎっす」とカシマさんに話したところ「いやあ、前のやつから半年経ってますし、出ますよ」と返されて悶絶。SPOILMANのリリースペースの速さにはいつも驚かされているが、今回ワンマンライブ会場でのゲリラ的先行発売という形でその速さをいつも以上に実感させられ、スター性があるな~と思った。

 

 

 

 翌日12/24はcomputer fight+TACOのツーマン@西荻窪FLAT。開始時間が割と遅く、なんとか体に鞭打って間に合うことができた(途中で諦念玲奈にお使いを頼まれるくらいには余裕があった)。会場に入るといつも通りの無音。そして机の上には金属類のインスタレーション。このような総合的な(音楽だけでないという意味)表現・ライブ体験を提供しようとする諦念玲奈の姿勢はとても好きだ。

 

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 喫煙所で喉笛くんと会話して、the bercedes menzの「天蓋」のPVを絶賛したりしているとTACOの演奏開始時間が到来。…と思っていたら、なんとcomputer fightのVo.カンフーに手を引かれた山崎春美さん(目隠し・四肢拘束状態)が登場。緊張感溢れる空気の中、TACOが演奏を開始。森田潤さんのアナログモジュラーシンセにはパレスチナの旗が刺さっている。全身が興奮しながらも、踊り狂うのはなんか違う気もしたので、自分の体を抑えつけつつ、二人のパフォーマンスを凝視した。森田さんは爆撃のようなノイズや、EP-4のようなピコピコ音、ロック曲のサンプリング?などを流し、春美さんがシャウト。時折MCで(おそらく)ガザに関することを話す。

 

 

 

 TACOの演奏の最中、かつて山崎春美さんが言ったという「政治なくして何が音楽でせうか」というテーゼについて考えていた。自分は、冒頭の春美さんのパフォーマンスや森田さんの机上にあるパレスチナの旗を見て、ガザの事について考えている。ノイズの音は、爆撃を表現しているのかもしれないと考えている。一方で、TACOのパフォーマンスはカッコよく、何も考えずに耳を傾けていたいとも思っている。すべての表現はイデオロギー的である。「音楽はすべて政治的でなければならない」もではなく、「そもそも政治的ではない音楽表現は存在しない」のではないか。表現者は自らの政治性について自覚的であることが肝要であり、「(狭義の)政治の話をしろ」ということではないという認識。だってライブ中政治のこと考えてたら音に集中できないし…。(人や曲によるか?)

 

 そんなこんなで、computer fightの演奏に切り替わる。脱退後も若干嫌がられるくらいライブに足を運んでいるが、この日は2曲新曲をやっていてそれが両方ともとても良かった。元々computer fightは諦念玲奈が考えた1〜2のリフを少しだけ繰り返すだけのショートチューンが中心だったが、最近はそこから軸足をずらし、歌を中心とした曲作りに力を入れていると聞いた。そこはVo.カンフーの加入による影響もあり、本名くんがいた頃とは別の方向性へ向かっている。アンセムっぽい曲もできてくるのかもしれず今後の作品がとても楽しみだ。

 

 

 

 この日のcomputer fightは2023年の中でも指折りの大盛り上がりデーで、自分は曲をよく知っているだけにとても楽しむことができた。これも自分とライブとの相性の話だが、自分の特殊な経緯により強い楽しみが発生している状況なので、一般的な観客の感想は出力はできない。

 

 この日も見知った色々な人達が観客としてきていたが、computer fightは個人的なつながりがあるバンドを対バンに呼ぶことを避けるし、無音の会場は観客同士のコミュニケーションを抑止する方向に作用する。その雰囲気は美術館のようで、観客が表現(ライブ)に集中するようデザインされている。computer fightの自主企画は普通のライブ空間とは違う空気が流れているので、見に行ったことがない人はぜひ1回顔を出してみてほしい(次回の予定知らないけど…)。

 

 終演後、打ち上げにお邪魔して山崎春美さんとお話をする機会も得た。体温の低い気さくさを感じ、いろいろと貴重な話、先々の活動予定の話を聞いて興奮した。年の瀬の土日にいい休日を過ごすことができてよかったなあ、という次第であった。というところまで書いて筆を置きます。